犬の優れた嗅覚を解剖学的に明らかにした研究報告

犬は素晴らしい嗅覚の持ち主です。この秘密の一旦として犬の鼻と脳の間に、今まで知られなかった神経経路が発見されたそうです。

人の鼻には600万の嗅覚受容体(嗅球)がありますが、犬の鼻には2億から10億もの受容体が確認されています。また、この「臭い」を分析している犬の脳の容量は、人間より30倍も大きいそうです。これは、犬の嗅覚は人が作り出した最先端の人工嗅覚センサーよりも何倍もの敏感な感覚を持っています。例えば、20個分のオリンピック競技用プールに一滴の液体(10億分の1の濃度/ppt)を混ぜた濃度を確認できるほどです。犬の優れた嗅覚により、今や警察犬として訓練されば、爆弾や麻薬を嗅ぎ分け、容疑者を追跡し、ガンや糖尿病などの人間の病気を検出する試みも使われています。

一方で、犬の嗅覚系の構造はほとんど知られてきませんでした。今回、獣医放射線医であり、コーネル大学獣医学部の神経画像専門家であるフィリッパ・J・ジョンソンらは、最先端のMRI (Magnetic Resonance Imaging)を用いて犬の後頭葉、皮質脊髄路、大脳辺縁系、毛様体葉、嗅内経路に接続する5つの白質路で構成される広範な経路をマッピングすることで、強力な神経接続が犬の鼻と脳に広く帯状に結びついていることを発見し、2022年7月11日のJournal of Neruoscienseに報告しています。

この新しい脳機能マップにより犬が鼻(嗅覚)で「見る(視覚する)」方法を解剖学的な立場から説明しています。研究で得られたマッピングにより、嗅球が記憶や感情を司る脳領域に接続する伝達経路など、既に知られているの経路もいくつも見つかりました。人の場合であれば、これらの経路は、「香水の匂いが、なぜ長い間忘れられていた記憶を呼び起こす強力な感覚となるか?」を説明できることでしょう。しかし、犬のマッピングでは、更にまったく新しい経路が見つかりました。明らかに太い神経経路が、嗅球を後頭葉、つまり犬の脳の視覚を扱う部分にも接続していたことが判明しました。

今まで、訓練を受けた犬・探知犬の行動を見てきたことで、嗅覚と視覚に繋がりがあると理論付けた人はたくさんいることでしょう。しかし、誰もこの関係を証明することはできていませんでした。

犬はすべての感覚を使って周囲の環境を評価しています。今回発見された、嗅覚と視覚の間の関係は、嗅覚が視覚を補うことができる可能性を示唆します。仮に、盲目犬であれば、嗅覚だけで周囲の環境を判断できるやもしれません。

doi:10.1523/JNEUROSCI.2355-21.2022。

https://www.jneurosci.org/content/early/2022/07/06/JNEUROSCI.2355-21.2022

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